第65話「果然是緹蕾婭吧4」0;生禸1;
《緹蕾婭的煩惱》 · 裏奈使徒 · 2082 字
ティム達が出て行った後、後ろに控えていたドリュアス君がペコリと頭を下げ、前に進み出てきた。
「ん、ドリュアス君、どうしたの?」
「ティレア様、そろそろ小蟲の首実験を実施予定でございます。お立會いはいかがされますか?」
「小蟲?」
「名はエリザベスです」
「エリザベスって、あのエリザベス?」
逆恨みで西通りを焼き討ちしようとしたイカレ貴族の親玉だ。今更思い出したくもない名前だね。
「はっ。我ら邪神軍に楯突いた愚かで不遜な小蟲でございます」
「エリザベスって死んでるよね?」
「いえ、あの愚かで不遜な小蟲は邪神軍で拘束しております。大逆事件の主犯ですので、今はあらゆる拷問を執行中でございます」
ドリュアス君が淡々と述べる。その顏は、冷酷な執行官そのものだ。法に違反する、この場合は俺に逆らう者なのかな。そういう輩は、徹底的に斷罪するという強烈な意志を感じるね。
エリザベスもそんなドリュアス君に目をつけられたのだ。今頃、恐怖で震え上がっている事だろう。
なんてね!
事実は違うけど。
まず、エリザベスは死んでいる。あの騒動で、確か英雄ガデリオにバッサリと斬られたはずだ。そこまでなら覚えている。俺の記・憶・
に間違いは無い。
では、なぜこんな噓をつくのか?
主犯は俺達の手でとっ捕まえたと言いたいんだろうな。
これだから中二病の奴らは……。
もうつっこまないよ。だんだん疲れてきた。
「ドリュアス君、本気でこれ必要だと思ってる?」
開発計畫書だね。
うんうん、またいつかその妄想話の続きを聞かせてね。俺が暇で暇でたまらない時にでも。
「ドリュアス君」
「はっ。きゃつは、ティレア様に歯向かった大罪人でございます。くっく、灼熱、極寒……あらゆる地獄を體感させておりまする」
「それは、土下座強制器具でございます」
「はっ。魔法で強制してもよかったのですが、不屆き者を罰するのに、物理的手段もあってしかるべきかと」
「……」
俺は手を交差させてバッテンを作る。
あれほど稅金の無駄使いをするなっていったのに……。
怖い。怖いぞ、その顏。
「これって、あれだよね? 私が前に話した――」
「えぇ、えぇ、それでいいわ。そうやってせいぜい心の折り合いをつけてなさい」
架空の物語にここまで感情を込めて話しをしてくる。そのマイナスの情念には恐れ入ってしまう。
「一応、首実験の前にエリザベスを執行する予定です。以前、ティレア様がエリザベスを土下座させると仰っておりましたから。灼熱の鉄板に擦りつけてやります」
「もういいわ。あなた達で好きにして頂戴。私はこの件、ノータッチだから」
それから開発計畫書を目を皿にして読み解いていくと、でるわ、でるわ。
富國に必要な政策がこれでもかってつまっている。
ドリュアスの真剣な表情。
せっかくのイケメンが臺無しだ。ドリュアス君は、物語に出てくる拷問官ばりの嗜虐に満ちた表情をしていた。
ドリュア――ス! 貴様もか!
「それとティレア様」
ペラペラとめくる。
ドリュアス君は分厚い書類を手渡してきた。
「では、邪神法に則り、第一級の罪で処理させて頂きます」
「御意」
農地改革、僱用増大、未開地の開墾……。
「そう……うん、頑張って」
「ここにあるTONEGAWAって機器はなにかな、かな?」
俺が許可を出すと、ドリュアス君が頭を下げる。
俺には考え付かない素晴らしい施策だ。
ドリュアス君は目を細めてにこやかに話す。
まぁ、架空の話しだ。これは好きにさせてあげよう。
「なんでしょうか?」
俺が雑談で話した妄想をこれでもかって具現化しようとしている。
それもこんな下らない物を、メイドインジャパン並みの高品質なこだわりで作るだろう。
「お気に召しませぬか? もちろん首実検後も、拷問は半永久的に続けまする。これは、形式的な戦勝儀禮ですので。首を斬った後の蘇生措置にぬかりありませぬ。決して死なせるような真似は致しませんので」
「お任せ下さい。既に苦悶の叫びを常時上げさせております。私が訪れる度に『助けてください』と涙ながらに懇願してましたな。ですが、まだまだこんなものではありません。きゃつには、生まれてこなければよかったと思わせるほどの苦痛と絕望を! 魂からの叫びを上げさせてご覧に入れます!」
「これを」
ただね……。
うん、別府の溫泉地獄巡りみたいな話をしているね。
そう言って、ふふと笑うドリュアス君。
だめだこりゃ。身內で事を治めようとした俺が間違っていたようだ。これは外部からアドバイザーを呼ぶしかないだろう。
マジだ。こいつは冗談なく作る。
無駄金のオンパレード。
幼少の頃、誰かに苛められたトラウマでもあるのかな?
「まだなにか?」
「御意。恐れながらティレア様が発案された素晴らしき叡智を參考にさせて頂きました」
「それでティレア様、話を戻しますが、首実験の立會いはいかがされますか?」
それはいい。納期も守って、素晴らしいと思うよ。
「はぁ~首実験ねぇ~」
もう中二病はお腹一杯よ。
「ふぅん、拷問の最中なんだ」